菅総理の『政治家の覚悟』という本を読みました。
2012年に刊行された単行本『政治家の覚悟 官僚を動かせ』を元にした本で、その後の官房長官時代のインタビューなどを収録した内容とのことです。
菅総理に対する河野大臣や高橋内閣参与のコメントを聞いていると、実務的で優秀な方というイメージでした。
この本を読むとイメージ通りでしたが、今まで日本をよくするために実際にやってこられた多くの具体例が挙げられていて、圧倒されました。
官僚は前例を変えることをやりたがらず、何かやろうとするとすぐに言い訳してやらないでおこうとするようです。しかし、菅氏は官僚を説得したり、時には人事権をフル活用したりして色々なことを実現されてきています。
・都市部と地方の格差是正
秋田出身で、横浜で市会議員になり、地方と都会を両方を目にしてきて、都市部と地方の格差についての問題意識をずっとお持ちだったようです。その是正のために、ふるさと納税の導入、税制の見直しをされています。
格差について、成人式は、東京だとホテルの広間を借り切って盛大に開催しているのに対し、地方の大部分では公民館でささやかな式になっているのを例に上げられていました。
・南米へのデジタルテレビ日本方式の売り込み。
デジタルテレビのプロモーションをサポートし、南米の国々で採用され、市場拡大につながっています。
・高金利の政府資金の繰り上げ返済
地方が国から借りた資金が昔のままの高金利(7~8%)であり、低金利の時代でも繰り上げ返済ができないので、地方の財政の負担になっていたそうです。それを繰り上げ返済可能にされました。
・年金記録問題対応
一時期、ずさんな対応をしていた社会保険庁の年金記録がかなり問題になっていましたが、その後処理を、菅氏がまかされて総務省で対応したそうです。
・一年間で1億を超える家賃を払っていた独立行政法人
新宿のビルで高い家賃を払っていた独立行政法人を引越しさせ、年間一億円の節約となりました。
・首長の高額退職金と地方公務員の高給にメス
知事などの首長の高額な退職金が問題としてありました。ただ、これは直接変えられない(地方自治法で守られている)ので、公開させることにしたそうです。2007年当時、4年間で兵庫県知事4800万、4500万円以上は東京、岐阜、長崎の退職金だったそうです。ものすごい額です。
総務省で公開されるようになってから減額傾向になっているそうです。
大阪市職員も民間と比べてかなり高給でこれらを公開されることになったそうです。
・被災者の支援制度
阪神大震災のときの制度が、運用の問題で、新潟中越沖地震で被災者の人が支援を受けにくかったことがあり、支援制度を使いやすくするよう対応したそうです。
・マスコミ
「発掘!アルアル大辞典II」でデータ捏造があり、関西テレビがそれを認めました。
このようなことの対策のために法整備を進めていたそうですが、こちらは審議時間が足りなかったそうです。
ちょっと興味深かったのは、ある食材が健康に良いと放送すると、スーパーで売り切れになったりしますが、放送予定の製品を多く仕入れておくというようなインサイダー取引の情報もあったそうです。
・NHK改革
NHKがあの手この手で既得権益を守ろうとしているのに対して、初めての値下げを実現されたとのことです。
・万景峰号の入港を禁止する法律
北朝鮮のスパイ活動が関係する船の入港を認めないようにするのを働きかけ、実現されました。これは北朝鮮への制裁の一つとなっているようです。
・「振り込め」詐欺対策
銀行口座やプリペイド携帯の本人確認など管理強化の法律を実現されました。
・外国人犯罪対応
2004年頃、外国人の凶悪犯罪が過去最高となり、それに関連する不法滞在者対策を講じられています。
日本のために色々なことを、菅総理は今まで実現されてきています。その実現内容もすごいと思いますが、その実現プロセスもすごいです。本に書かれていますが、官僚、縦割り行政、既得権益者などの抵抗にあいながら、手を尽くして色々実現されています。
官僚については、指示に従わない場合、更迭もされています。ただ、自分の役職がかわるときに復帰させたそうです。また、ノンキャリアでも優秀でまじめに場合は、慣例にはない抜擢をしたりして士気を高めたりもされたそうです。
最近あるところで、政治家は実績ではなくこれからやることが重要だ、という書き込みを見ました。
菅総理には今後も期待したいなと思います。
(比べることではないかもしれませんが、自分が長く働いてやってきたことと、菅総理が今まで実現してきたことは、あまりにも違うなと思ったりします…)
(↓ランキングに参加しているのでクリックしていただけると幸いです)