2年以上前に買って、読んでいなかった『自由を守る戦い』を、今年に入って読み終えました。
ロシアのウクライナ侵攻の前だったので、それほどウクライナの歴史は注意深く読んでなかったで改めて目を通してみました。
著者は、虎ノ門ニュースにも出演しているウクライナ人のナザレンコ・アンドリー氏で、この『自由を守る戦い』は令和元年八月十五日に出版されています。
この本は、ウクライナがたどってきた歴史をひもとき、日本人の安全保障に意識の低さに警鐘を鳴らす内容となっています。
ウクライナの歴史は、このブラックジョークで端的に表わされてるかもしれません。
ウクライナは、十三世紀にモンゴル帝国に征服されて以来、800年もの間、他国の植民地支配を受け続けた。略史の表に上げただけでも「独立戦争」「侵略」「占領」という言葉が何度も出てくる。
侵略の回数があまりにも多いため、こういうブラックジョークが流行っていた。
「私はオーストリアで生まれ、ポーランドで育ち、ハンガリーの学校に行き、ソ連で就職し、今ウクライナに住んでいる」
「大変な人生でしたね」
「いや、私は生まれてから今まで一度もこの街を出たことがない」
ウクライナは、ヨーロッパとロシアの間の位置にあり、ヨーロッパ最大の穀倉地帯ということで重要な場所となっています。
「だからこそ、諸外国は一度ウクライナの領土を手に入れたら、二度と立ち上がれないように非常に激しい同化政策を行った」そうです。
そして、ソ連は、かつてのロシア帝国によるウクライナ政策の失敗は、ウクライナ人が多すぎたためだと考え、人口減少策を始めた。1932年、スターリンの計画で「ホロドモール」という大虐殺が起こった。
辞書を引くと、「ホロドモールは、1932年から1933年にかけてウクライナ人が住んでいた各地域でおきた人工的な大飢饉である」
このホロドモールでは、少なくとも数百万人のウクライナ人が亡くなっているそうです。
1937年には、作家など、ウクライナ・インテリゲンチャ(有識者)のエリートが1116人、ソ連の強制収容所で殺されました。
彼らが問われた唯一の罪はウクライナ人であるということ、ウクライナ語で作品を作っていたということだけであった。
民族を征服するための手段として、帝国主義者はまず「言語」と「文化」を攻撃する。アイデンティティを失った民族は、支配されやすい集団に変質してしまう。
こういう背景を知ると、ウクライナ人が懸命に自国を守るために戦っているのが分かる気がします。
ところで、『「言語」と「文化」を攻撃』というのを見ると、隣国で少数民族を同化させるためにやられていることを思い出します。
まだ2年前くらいですが、内モンゴルの小中学校から母語の教育を奪われ、中国語での教育となりました。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/09/post-94394.php
もし支配されてしまったら、自分の国の言葉や文化を放棄しなければならないという覚悟が必要かもしれません。
今回のロシアのウクライナ侵攻で、ウクライナ人は降伏した方がよいのではという論調も一部あるようです。
この点に関して、北村弁護士が動画で解説しています。ホロドモールにも言及されています。
ちなみに、日本人の場合、第2次世界大戦の時に、ソ連によるシベリア抑留がありました。ソ連は、終戦後にもかかわらず、武装解除し投降した50万人以上の日本軍を強制連行しました。
シベリア抑留(シベリアよくりゅう)は、第二次世界大戦の終戦後、武装解除され投降した日本軍捕虜らが、ソビエト連邦(ソ連)によって主にシベリアなどへ労働力として移送隔離され、長期にわたる抑留生活と奴隷的強制労働により多数の人的被害を生じたことに対する、日本側の呼称である。
ソ連によって戦後に抑留された日本人は約57万5千人に上る。厳寒環境下で満足な食事や休養も与えられず、苛烈な労働を強要させられたことにより、約5万8千人が死亡した。
(Wikipedia contributors. "シベリア抑留." Wikipedia. Wikipedia, 8 Mar. 2022. Web. 14 Mar. 2022. )
もし外国に支配されてしまったら、奴隷的強制労働をさせられたり、隣国で少数民族に対してやられているような民族同化のための非人道的な仕打ちなどを受けるかもしれません。
ナザレンコ・アンドリー氏の文章は、Twitterの投稿を見ていても思いましたが、非常に説得力があるなと思います。一般の日本人の文章よりも、しっかりした文章のような気がします。
この本を読んで改めてそれを感じました。
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